特定受給資格者は、雇用保険制度において、会社都合による離職者で、一定の要件を満たす方を指します。これらの方は、失業給付(基本手当)を一般の離職者(自己都合退職者)よりも有利な条件で受け取ることができます。本記事では、特定受給資格者の定義や該当する具体的なケース、受給できる給付金の詳細、申請手続き、注意点などを詳しく解説します。
特定受給資格者とは
特定受給資格者は、雇用保険法に基づき、会社都合により離職した労働者で、特定の要件を満たす方を指します。具体的には、労働者の意思に反して離職を余儀なくされた場合が該当します。特定受給資格者として認定されると、以下のようなメリットがあります。
- 給付制限期間がない:自己都合退職者に適用される給付制限期間(原則2ヶ月)が適用されません。
- 所定給付日数が長い:受給できる失業給付の期間が自己都合退職者よりも長くなります。
特定受給資格者に該当する条件
特定受給資格者として認定されるためには、離職理由が会社都合であり、労働者の責めに帰すべき理由ではないことが必要です。具体的には以下のようなケースが該当します。
具体的な該当ケース
離職理由 | 具体的な状況 |
---|---|
倒産・廃業 | 企業が倒産や廃業により事業継続が不可能になった場合。 |
解雇 | 企業側の都合による解雇(整理解雇、普通解雇など)。 |
雇い止め | 有期契約労働者が契約更新を希望したが、更新されなかった場合。 |
労働条件の重大な変更 | 賃金の大幅な減額、勤務時間の極端な変更、勤務地の遠隔地への変更など。 |
ハラスメントや違法行為 | パワハラ、セクハラ、賃金未払い、違法な長時間労働など企業側の不法行為。 |
安全衛生の問題 | 劣悪な労働環境で健康被害が発生した場合。 |
退職勧奨 | 企業から強く退職を促され、事実上の解雇と同様の状況で退職した場合。 |
特定受給資格者のメリット
給付制限期間の短縮
給付制限期間とは、失業給付の受給開始までの待機期間のことです。特定受給資格者は、この給付制限期間がありません。
- 自己都合退職者:待機期間7日間+給付制限期間(原則2ヶ月)
- 特定受給資格者:待機期間7日間のみ
所定給付日数の増加
特定受給資格者は、受給できる所定給付日数が自己都合退職者よりも長くなります。
所定給付日数の比較表
離職時の年齢が45歳未満の場合
被保険者期間 | 自己都合退職者 | 特定受給資格者 |
---|---|---|
1年未満 | なし | 90日 |
1年以上5年未満 | 90日 | 90日 |
5年以上10年未満 | 120日 | 180日 |
10年以上20年未満 | 150日 | 210日 |
20年以上 | 180日 | 240日 |
離職時の年齢が45歳以上60歳未満の場合
被保険者期間 | 自己都合退職者 | 特定受給資格者 |
---|---|---|
1年未満 | なし | 90日 |
1年以上5年未満 | 90日 | 150日 |
5年以上10年未満 | 120日 | 240日 |
10年以上20年未満 | 150日 | 270日 |
20年以上 | 180日 | 330日 |
失業給付の受給条件と手続き
必要な書類と持ち物
ハローワークで失業給付を申請する際には、以下の書類を準備する必要があります。
必要書類・持ち物 | 説明 |
---|---|
雇用保険被保険者証 | 会社から退職時に受け取ります。 |
離職票(1・2) | 退職後に会社から郵送されます。離職理由を確認。 |
マイナンバーが確認できる書類 | マイナンバーカード、通知カード+身分証明書など。 |
身分証明書 | 運転免許証、パスポート、住民基本台帳カードなど。 |
証明写真(縦3cm×横2.5cm) | ハローワークにより必要な場合があります。 |
印鑑 | 認印(シャチハタは不可)。 |
預金通帳またはキャッシュカード | 給付金の振込先口座を確認するため。 |
申請手続きの流れ
- 離職票の確認
- 離職理由が「会社都合」となっているか確認します。
- 離職理由コードが**「11〜16」**であることを確認。
- ハローワークでの求職申込と失業給付の申請
- 必要書類を持参してハローワークで手続きを行います。
- 待機期間(7日間)
- この期間は給付を受け取れません。
- 受給説明会への参加
- ハローワークから指定された日時に参加し、受給に関する説明を受けます。
- 失業認定日
- 4週間に1度、ハローワークで失業の認定を受けます。
- 給付金の受け取り
- 指定の口座に振り込まれます。
再就職手当の活用
特定受給資格者が早期に再就職した場合、再就職手当を受け取れる可能性があります。これは、早期再就職を促進するための制度で、経済的な支援となります。
支給条件
再就職手当を受給するための主な条件は以下の通りです。
- 基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること。
- 1年以上の雇用見込みがある職に就くこと。
- 待機期間の満了後に再就職したこと。
- 過去3年以内に再就職手当を受給していないこと。
- 離職前の会社と密接な関係がないこと。
支給額の計算方法
支給残日数の割合 | 支給率 |
---|---|
所定給付日数の3分の2以上残存 | 基本手当日額 × 支給残日数 × 70% |
所定給付日数の3分の1以上残存 | 基本手当日額 × 支給残日数 × 60% |
例:
- 基本手当日額:5,000円
- 所定給付日数:180日
- 再就職時の支給残日数:150日(所定給付日数の3分の2以上)
支給額計算:
5,000円 × 150日 × 70% = 525,000円
注意点と対策
離職票の離職理由を確認
- 正確な離職理由の記載:離職票の離職理由が実際の状況と一致しているか確認します。
- 訂正が必要な場合:誤りがあれば、企業に訂正を依頼します。
離職理由コード一覧
コード | 離職理由 | 特定受給資格者への該当 |
---|---|---|
11 | 倒産・廃業 | 該当 |
12 | 解雇 | 該当 |
13 | 雇い止め(契約期間満了) | 該当 |
14 | 労働条件の重大な変更 | 該当 |
15 | ハラスメント等の不当行為 | 該当 |
16 | その他会社都合による離職 | 該当 |
31〜34 | 自己都合退職 | 該当しない |
証拠の収集と保存
- 解雇通知書や雇用契約書:離職理由を証明するために保管します。
- メールやメモの保存:上司や人事部とのやり取りを記録します。
- 労働条件通知書:労働条件の変更を証明するために必要です。
専門機関への相談
- 労働基準監督署:労働条件や解雇に関する相談が可能です。
- ハローワーク:失業給付や再就職支援について相談できます。
退職に関する相談は下記から↓↓
特定受給資格者のまとめ
特定受給資格者に該当すると、失業給付を早期に、かつ長期間受け取ることができ、再就職手当の受給も可能となります。離職後の生活を安定させ、次のキャリアステップに進むために、以下のポイントを押さえましょう。
- 離職票の確認と訂正:離職理由が正しく記載されているか確認し、必要に応じて訂正を依頼。
- 必要書類の準備:手続きをスムーズに進めるために、必要な書類を揃える。
- 専門機関への相談:疑問や問題がある場合は、早めに相談する。
- 再就職手当の活用:早期再就職を目指す場合は、制度を有効に活用する。