雇い止めとは、有期労働契約(契約期間が定められている雇用契約)が更新されずに終了することを指します。有期契約労働者にとって、契約の更新がされないことは、事実上の解雇と同様の影響を及ぼします。本記事では、雇い止めの定義、法律上の規制、労働者の権利と対策などを詳しく解説します。
雇い止めとは
雇い止めは、有期労働契約の期間満了時に、使用者(雇用主)が契約の更新を行わないことを指します。有期契約労働者は、契約期間が定められているため、契約期間が終了すれば労働関係も終了します。しかし、契約が更新されることが期待されていた場合や、過去に繰り返し更新されていた場合、雇い止めは労働者にとって突然の失業となり、生活に大きな影響を及ぼします。
雇い止めに関する法律の規制
労働契約法による保護
労働契約法では、雇い止めに関する以下の規定が設けられています。
- 契約更新の期待がある場合の保護(第19条):
- 「更新期待権」: 労働者が契約の更新を期待する合理的な理由がある場合、使用者は簡単に雇い止めをすることができません。
- 雇い止めの客観的合理性と社会的相当性:
- 雇い止めの理由が客観的に合理的であり、社会通念上相当であることが求められます。
無期労働契約への転換ルール
改正労働契約法(平成24年施行)では、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申込みにより無期労働契約に転換できるルールが設けられています。
雇い止めの予告と手続き
予告期間
使用者が雇い止めを行う場合、一定の予告期間を設ける必要があります。
- 1年未満の契約期間: 少なくとも契約期間の満了までに通知。
- 1年以上の契約期間: 契約期間満了の30日前までに通知。
書面による通知
- 雇い止め予告通知書を労働者に交付することが望ましい。
- 雇い止めの理由や契約終了日を明示。
雇い止めに対する労働者の権利と対策
不当な雇い止めの主張
労働者は以下の場合、不当な雇い止めとして主張できる可能性があります。
- 更新期待権の存在: 過去に複数回の契約更新があり、引き続き雇用されると期待できた場合。
- 雇い止めの理由が不合理: 個人的な恣意的理由や差別的理由による雇い止め。
労働組合や労働局への相談
- 労働組合: 労働組合に加入し、団体交渉を行う。
- 都道府県労働局: 総合労働相談コーナーで専門家に相談。
雇い止め後の失業給付
特定受給資格者としての認定
雇い止めにより離職した場合、条件を満たせば特定受給資格者または特定理由離職者として認定され、失業給付を有利な条件で受け取ることができます。
- 特定受給資格者: 契約更新を希望したにも関わらず、更新されなかった場合。
- 特定理由離職者: 契約期間満了による離職だが、やむを得ない事情がある場合。
申請手続きと必要書類
- ハローワークでの手続き: 離職票を持参して失業給付の申請。
- 必要書類:
- 雇用保険被保険者証
- 離職票(1・2): 離職理由が正しく記載されているか確認。
- 身分証明書: 運転免許証、マイナンバーカードなど。
- 印鑑、写真(必要に応じて)。
まとめ
雇い止めは、有期契約労働者にとって重大な問題です。労働契約法や労働基準法によって一定の保護が設けられていますが、実際には不当な雇い止めが発生することもあります。労働者は自分の権利を正しく理解し、必要な場合は専門機関に相談することが重要です。また、雇い止め後の生活を安定させるために、失業給付の制度を活用しましょう。